『作品 -俳優とヴァイオリニストによるインプロヴィゼーション』2023/1/28 開催!

【お悩み】一体、何をすればいいの?大人数の集団即興

5人、10人、15人……フリー・インプロで人が増えると、音も動きも埋もれちゃう!

大編成の集団即興って、一体どうすればいいの?

複数人で行うフリー・インプロヴィゼーション──集団即興*。いろんな人・楽器が楽しめる、自由な即興の醍醐味でもありますが、しばしば、「この大人数の中で、自分は何をすればいいのか?」と悩ましい編成でもあります。

管弦打楽器、踊り、ヴォイス、電子楽器、……多様な人々が入り乱れ、複雑に動く集団即興。一体、どんなことを考えて参加すればよいのでしょうか?

*集団即興について明確な定義はありませんが、この記事では仮に5人以上で行う即興とします。

「即興」「即興演奏」などの使い分けについて

当メディアにおける言葉の扱いについては、「完全即興?即興演奏? フリー・インプロヴィゼーション、呼び方あれこれ 」の記事をご覧ください。

集団即興の難しさってなんだろう?

そもそも、集団即興の難しさはなんでしょうか?

答えはいたってシンプルで、舞台に立つ人が多いから。人が多ければ多いほど、耳も視界も、空間も埋め尽くされ、自分の居場所がなくなります。音量は大きくなるし、音数は厚くなるし、他人の動きも混雑し、物理的に舞台の上も狭くなってしまいます。

聴いている/観ている人も同じです。同時に鳴っている音・動いているものが多すぎると、情報を処理しきれなくなり、ぼんやりとした印象を受け取りがちです。映画館の大スクリーンは迫力に満ちていますが、目がチカチカしたり、一度の観劇では細かい描写に気が付かなかったりしますよね。

即興する人にとっても、それを聴く/観る人にとっても、情報過多になりがちな大人数の集団即興。ここに参加する人は、実際、どんなことを考えればよいのでしょうか?

1. いちばん大事なこと「出・はけ」を意識しよう!

まず初めに、いちばん大事なことを書きます。多人数編成の時は、「出・はけ」を意識しましょう。ずっと音を出したり、踊り続ける必要はありません。ときどきは休んで、他の奏者に任せましょう。

「自分の居場所がない!」と思ったら、一旦パフォーマンスをやめて、状況が変わるまで待ちましょう。これは大編成の時だけでなく、デュオやトリオの時も同じです。

ステージの上にいると「何かしなくちゃいけない!」「何もせずにはいられない!」と思いこみがちですが、そんなことはありません。

例えば作曲された楽曲でも、ピアノソロのパートがあったり、ヴォーカルなしでインストだけのパートがあったりします。演劇なら、4人の役者がいても、その4人が必ずしもずっと喋っているわけではないし、ダンスなら、ソロのパートもありますよね。

ステージ上にいる人は、必ずしも常に何かをしているわけではないのです。何もしていないように見える人がステージにいることも、とても重要です。

もっといえば、「今、自分は何もしていませんよ」「しばらく何もする気はないよ」と強く周囲に伝えたければ、ステージから降りたっていいのです

2. わずかな隙を見逃さない!一瞬の空白に動こう

どんなに大量の音・動きで埋め尽くされても、必ずどこかに「空白」ができます。その一瞬を狙って、えいっ!と音を出したり、動くのも手です。

そのためには、ともかく周囲の音・動きをキャッチし続けることが大事です。目で、耳で、あらゆる感覚を総動員して、「ここだ!」という瞬間を捕まえましょう。

こればかりは経験が必要かもしれません。ピアニストであれば指の動き、管楽器であれば息の切れ目、ダンサーであれば指や脚や顔や身体の向き。いろんなところに「空白」のヒントはあるはずです(慣れるまで難しいので、すぐにできなくても落ち込まないでくださいね)。

3. でも、いつまで経っても「空白」ができないんだけど……

いつまで経って同じ人同士でパフォーマンスしていて、状況が変わらない……そんな時もあるかもしれません。特に音の小さい楽器を鳴らす人は、なかなか気づいてもらえないことも。

そんな時は、立ち位置を意識しましょう。

例えば、自分以外の3人が、ステージ前方でパフォーマンスしてい流とき。彼らより手前に出てみたり彼らの視線が交わるところに邪魔するように立ってみましょう。

それでも場が変わらないようであれば、前に出たその場で、ただ立ち尽くしてみたり、座ってみたりしてみましょう。

ポイントは、音を出したり、踊ったりしないことです。ただ、毅然とした態度で自分の存在を示します。もしここで音を出すと、既に出来上がっているパフォーマンスに乗っかる形になってしまい、ますます、今の状況が続いてしまいます。

「もうそろそろ私の出番だよ」と、ちょっとやりすぎなくらい態度で示してみましょう。それでもダメ? 止めてくれない? うーん、それはもうあなたの責任じゃないので、舞台を降りてサヨナラ! また次の機会!

4. 複数のグループが、別々に共存する──10人以上の大世帯の場合

集団即興の中でも、10人、15人、20人以上の場合を考えてみましょう。こうなってくると、誰かがリーダーシップを取ろうとしてもまとまりきらないでしょうし、音の空白を捉えるとか、そんな余裕もなかなかありませんね。

いくつか、ヒントはあります。まず「出・はけ」を意識して、次から次へ、入れ替わり立ち替わりパフォーマンスする形。ちょっとしたメドレー形式のようで面白いですね。

ただこれだと、たくさんの人が同じステージに上っている、せっかくのシチュエーションを活かしきれていないかもしれません。

そこで発想を変えてみましょう。全員が同じステージに乗っているからと言って、必ずしも、全員で同じステージを作る必要はありませんよね

例えば、今、15人のメンバーが、同じステージに上って、同時に音を出したり、動いていたりするとします。彼らの即興は、一見するとてんでばらばらです。ところがよく観察すると、大まかに3つほどのグループに分かれていることに気が付きました。

リズムを刻んでいるグループ。ノイズ的な音で掛け合っているグループ。身振り手振りでやりとりするグループ。

この3つのグループを無理やりまとめようとするのではなく、3つのグループがそれぞれ別個のパフォーマンスを発展させていったら、どうなるでしょう?

同じ舞台上なのに、異なるパフォーマンスが共存する。そんな状況が自然に生まれてしまうのも、即興の面白さのひとつ。

もし、演(奏)者がステージ上だけでなく、客席や、舞台裏や、2階席にいたらどうでしょう。時には、グループ同士でメンバーが入れ替わったり、メンバーが増えたり減ったり、二つのグループの間に立つ人も現れるかもしれません。

ひとつにまとまらないこと、みんなが同じになれないことを受け入れる。それが、フリー・インプロヴィゼーションで大事なことなのかもしれません。

集団即興、大きな音が出せない楽器はどうすればいい?

大きな音が出せなくて、ちょっと人数が増えると埋もれてしまう。アコースティックの単旋律楽器はとくにこの問題に直面します。

「出・はけ」を意識するにしても、いつもいつも埋もれてしまってはストレスが溜まるというもの。

音量の小さい楽器と、音量の大きい楽器の共存。これは大人数の即興に限らず、デュオなどの少人数でも議論に上がります。長いお話になるので、また別の記事で書きましょう。大事なことは、音量ではなく、態度と音色です。

5. 集団即興で考えるポイント・まとめ

それでは、集団即興で考えるポイントをおさらいして、今回の記事を締めくくりましょう。

  • 出ずっぱりの必要はない。「出・はけ」を意識しよう!
  • わずかな「空白」を狙い澄まして、渾身の一手を!
  • 必要であれば、音や踊りではなく「態度」で示そう!
  • 10人以上の大編成では、異なるグループの共存も面白いかも?

この記事が、フリー・インプロヴィゼーションで悩む人の助けになりますように。