【実践】自由に音を出す即興演奏、フリー・インプロヴィゼーションをやってみよう!

この記事では、「即興演奏」や「フリー・インプロヴィゼーション(自由な即興)」をやったことがない人向けに、フリー・インプロヴィゼーションの始め方をアドバイスします。

楽器が弾けない?歌が歌えない?自由になんて動けない?だいじょうぶ。そんなことは全然関係ないのが、フリー・インプロヴィゼーションの素敵なところです。

* 「そもそもフリー・インプロヴィゼーションとは? 即興演奏とは?」というかたはこちらをお読みください。

フリー・インプロヴィゼーション(自由な即興)を始める前に

いまからフリー・インプロヴィゼーションを始めようとするあなたに伝えたいことは、ひとつだけ。それはすなわち、

ジャッジしないこと。

あなたが、自分で出した(出したいと思った)音について、「いい」とも「悪い」とも評価しないこと。それが、自由なフリー・インプロの第一歩です。

始め方① 質問に音で答えよう

と、これだけでは途方に暮れてしまうかもしれません。そこでさっそくですが、あなたが思いつく音を出すきっかけを作ってみましょう。下にある質問を見てください。

あなたが今朝、食べた料理はなんですか?
おにぎり、シリアル、トースト、etc…
あなたがいま、感じている気分はなんですか?
元気、眠い、疲れた、寒い、暑い、etc…

さあ、これらの質問に対する答えを、「音」で出してみましょう。楽器でも、歌でも、身の回りにある道具でも、なんでもよいです。

ただ、できればまだ言葉には頼らないで。音だけで、その答えを作ってみるのです。

そしてそのとき、これが「いい」か「悪い」か、自分で評価しないでください。「こんなのもアリかなあ」「こんなのはどうだろう」と、ただ、納得のゆく音を探してみてください。

始め方② 自分が好きな音を探してみよう

「表現したいものなんてない」「イメージなんて湧かないよ」という人は、さらにシンプルです。ただただ、自分が好きな音を探してみましょう

楽器であってもいいし、声であってもいいし、壁を叩いた音でもいいし、この記事をこうして読んでいるうちに聞こえてくる音でも、なんでもいいです。あなたが好きだとおもう音を探して、追いかけてみてください。猛烈に好きと思えなくても、「なんとなく」でよいのです。それが自分で出している音でないのなら、真似してみましょう。

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……どうですか?音を出してみましたか?

ほら! これでもう、あなたは即興ができました。

あなたはいま、楽譜もなく、かといって譜面に書くこともなく、思いつきで音を出しました。それがすでに、自由な即興、フリー・インプロヴィゼーションなのです。

日常におこなっている「即興」

もっと言えば、音を出したり探したりするよりずっと前、あなたは普段から「即興演奏」をしています

誰かと話す時、あなたは常に台本を用意して、しゃべることをあらかじめ準備してから話していますか? かりに準備していたとしても、人間は予想外のコミュニケーションばかり、そのつど、あなたは場面に応じたことばを選んだり、選ばなかったりしているはずです。

まさしく即興で、あなたは誰かとコミュニケーションをとっているはずです。

日常で行なっている、さりげない、誰かとのコミュニケーション。フリー・インプロヴィゼーションとは、基本的には「誰か」──そこには、あなた自身も含まれています──との対話、というイメージを持つと、わかりやすいでしょう。

フリー・インプロの基本──「よい音楽」かどうかでジャッジしない

さて、さきほどからこの記事では、何度も「音」と表現しています。あえて「音楽」とは書いていません。それはなぜか?

私たちはほとんどの場合、楽器を演奏したり、声で歌ったり、作曲したりする時、無意識にそれらを「これは、よい音楽だろうか?」というような基準でジャッジしてしまうのです。具体的には、

「これはきれいな音程か?」

「正確なリズムか?」

「理論通りになっているか?」

などなど……

ですが考えてもみてください。なぜ、きれいな音程でなければいけないのでしょう?

たとえば世界には、ドレミファソラシドに当てはまらない音程や音階でつくられる音楽がたくさんあります(興味のある人は微分音などで検索してみてください)。2拍子や3拍子におさまらない複雑な拍子感でうたう人々、あるいは拍子感に頼らずうたう人々もたくさんいます。

もともと、音楽は、ドレミファソラシドでなくてもいいんです。リズムになっていなくてもいいんです。「ドレミファソラシドじゃなきゃいけない」「リズムになっていなきゃいけない」「メロディになっていなきゃいけない」なんて、誰が決めたんでしょうか?

「〜でなくてはいけない」を、やめる。

「じゃあ、ドレミになった音楽を即興でやっちゃいけないの?」と思ってしまうかもしれませんが、実際のところ、まったくそんなことはありません。もしあなたが本当にドレミでなにかを表現したいと思うなら、あなたは迷うことなくドレミを使った方がよいです。

犬とか、パンとか、気分が悪いとか、表現したいこと。

自分が「これが好きだ」とおもう音。

大事なのは、「〜でなくてはいけない」と思い込み、それに当てはめて良し悪しをジャッジすることを、やめる。これだけです。

まずは気楽に、特別でないことだと思って

ぜひ、気楽に、日々の日記をつけるような気持ちで、音を出してみてください。

もし、「自分の演奏を人に聴いて欲しい」とおもう時がきたら、また、別の記事でお会いしましょう。

フリー・インプロヴィゼーションは──自由な即興は、すでにあなたの日常にある存在です。あなたの心のなかにある表現です。ただ、気がついていないだけです。